スイッチ一つで温度を調節できる夢のような生地を設計!
服(Image Credit: unsplash)
人類にとって最も重要な衣食住。その中でも衣服は四六時中つねに身につけていて、体温調整にも欠かせない存在です。
ちょっと暑いとか寒いと感じた時に、スイッチ一つで体感温度を調整できる夢のような服が手に入るかもしれません。
今回、デューク大学を中心とした研究チームは、気温にかかわらず着用者が感じる温度を快適に保つことのできる生地を設計しました。
夢のようなその生地は、どのようにメカニズムで設計されたのかに迫ります。
詳細は、2023年6月13日に科学雑誌『PNAS Nexus』に掲載されました。
要点
・スイッチを入れるだけで温度を調整できる生地を設計した
・消費電力も僅かなので、生地の状態を約1,000 回切り替えることができると推定
ボタンひとつで温度を調整、電力もわずかしか消費しない
WeaVEの設計。異なる気温でも体感温度を快適に保つことができる(Image Credit: Chen et al.)
現代の衣服は着用者にとって快適な温度を保つために、断熱性と通気性のある生地で作られています。
そのように幾つかの性能によって温度は調整されていますが、結局のところ温度は、熱エネルギーを放出する速度によって決定されます。
そこで研究チームのスー氏とタン氏は、着用者の体に合わせて伸び縮みするように、ナイロンに配置された層状の特殊の物質からなる生地を設計しました。
この物質は異なる放射率を持つ2つの状態に、電気的に切り替えることができます。つまり、暑い時は熱エネルギーをより放射するように、寒い時は熱エネルギーを放出しないように、ボタンひとつで簡単に生地の状態を変更できるのです。
これまでも温度を調整できる生地は開発されていましたが、電気加熱や水の再循環などの技術を使用していました。その場合、大量の電気を消費するという欠点がありました。
タン氏らは、温度が調整できるこの生地を「着用できる可変放射デバイス」(WeaVE)と呼び、スマートフォンのアプリで制御できるようにしました。
WeaVEの場合、必要なエネルギーは生地の状態を切り替える分だけで十分です。
したがって研究チームは、一般的なスマートフォンを使用すれば、生地の状態を約1,000 回切り替えることができると推定しています。
ちょっと暑いと感じたらボタンひとつで快適な温度にする、そんな未来は意外とすぐそこまできているかもしれません。
参考文献
A kirigami-enabled electrochromic wearable variable-emittance device for energy-efficient adaptive personal thermoregulation
https://academic.oup.com/pnasnexus/article/2/6/pgad165/7192953?login=false
Researchers design a fabric that actively regulates temperature with the flip of a switch
https://techxplore.com/news/2023-06-fabric-temperature-flip.html