男根をイメージした最古のペンダントが発見された

古今東西、人類は男根をイメージした遺跡を多数残してきました。

男根だけでなく性にまつわる絵や物は古くからあって、フランスのショーヴェ洞窟にある外陰部を描いた洞窟壁画は32,000年前にまで遡ることができますし、ドイツ南西部にあるホーレ・フェルスのヴィーナス像は40,000年前に作られた可能性があります。

今回、ボルドー大学を中心とした研究チームは、モンゴル北部で発見された42,000年前のペンダントが男根を表現している可能性があると発表しました。研究者らは、ペンダントが「最も初期の男女別の擬人化表現」だと主張しています。

このペンダントが男根を表しているという共通認識が得られているわけではありません。

しかしもしこれが事実であるならば、少なくとも4万2千年前から男根をイメージした表現形式が確立していた可能性があります。

詳細は、2023年6月12日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

要点

・42,000年前から男根をイメージしたペンダントが制作されていた可能性がある

・初期の象徴的思考は身の回りの装飾品で表現していたのかもしれない

42,000年前のペンダントは男根をイメージして作られた?

男根をイメージしたとされるペンダント(Image Credit: Solange Rigaud/Scientific Reports)

今から7年前の2016年、このペンダントはモンゴルのハンガイ山脈北部にあるトルボルと呼ばれる遺跡で発掘されました。

このような遺跡がいつ作られたのかは、一般的に有機物の放射性炭素年代測定によって推定されます。

今回も付近で発見された有機物の放射性炭素年代測定によって年代が割り出され、42,400年から 41,900 年前のものであると推定されました。

ペンダントが発見された同じ堆積層からは、ダチョウの卵殻のペンダントの破片、ダチョウの卵殻のビーズ、石のペンダント、動物の骨片も発見されました。

どうやらこの時代の人々が、物を加工してペンダントなどの装飾品を制作していたのは間違いなさそうです。

ですが、このペンダントはどのようにして男根を表現していると言えたのでしょうか?

研究チームの筆頭著者であるソランジュ・リゴー氏は、「抽象的な表現においては、対象を表す非常に具体的な特徴を選ぶことになる」と述べています。

これは具体的には、ペンダントの製作者は亀頭と陰茎部を区別するために注意を払っているように見えるということです。

さらに、顕微鏡検査やその他の表面分析が行われ、形状や摩耗度合いなどが詳しく調べられました。その結果、以下の5つのことが示唆されました。

一つめは、尿道と亀頭の両方の溝を彫るのに石器が使用された可能性が高いこと。

二つめは、ペンダントは前面よりも背面の方が滑らかであること。

三つめは、紐が亀頭の周りに固定されていた可能性があり、装飾品が首の周りに着用されていた可能性があること。

四つめは、表面の磨耗の程度から、おそらく複数の世代にわたって受け継がれてきたこと。

五つめは、おそらく貿易を通じて他の場所から来た可能性があること。

初期の象徴的思考は身の回りの装飾品に表していたのかも

遺跡(Image Credit: unsplash)

とはいえ、このペンダントが男根を表していると断言することはできません。見る人によっては顔のようにも見えますし、何も表していないようにも見えます。あるいは偶然の産物の可能性も捨てきれません。

ボストン大学の考古学者カーティス・ラネルズ氏は、ペンダントを「小さくてかなり形のない物体」と呼び、男根を表しているという説に否定的です。

当のリゴー氏も、ペンダントが何を象徴する物であるかを「明言するのは難しい」と認めています。

ボルドー大学の考古学者フランチェスコ・デリコ氏はラネルズ氏とは逆に、「その解釈は成り立つと思う」と述べています。

つまり、世界の研究者たちの間でも賛否両論で議論が尽きないようです。

もしペンダントが男根を表しているのならば、初期の象徴的思考は身の回りの装飾品に表されるという説を強化します。

アフリカで発見された最古の装飾品には貝殻ビーズがあり、その起源は少なくとも60,000年前、最大で140,000年前にまで遡ります。

今回の研究結果は、最古の装飾品が作られたあと数万年も経過してから、人間が抽象的な表現を獲得した可能性を示唆しています。

リゴー氏は、このペンダントは「人間の特徴の一つである象徴的表現に意味を付加する能力を理解するうえで重要である」と述べています。

参考文献

Symbolic innovation at the onset of the Upper Paleolithic in Eurasia shown by the personal ornaments from Tolbor-21 (Mongolia)
https://www.nature.com/articles/s41598-023-36140-1

42,000-year-old Mongolian pendant may be earliest known phallic art
https://www.science.org/content/article/42-000-year-old-mongolian-pendant-may-be-earliest-known-phallic-art