赤ちゃんは録音よりもライブ演奏を好んで聴いていた

赤ちゃんは音楽をどのように聴いているのでしょうか？

ライブ演奏と録音された音では印象が大きく違います。しかしながら、この違いを赤ちゃんが認識しているのかについては解明されていませんでした。

今回、トロント大学を中心とした研究チームは、赤ちゃんがライブ演奏を理解していることを明らかにしました。

同じ演奏でも、録音している音より生の音に高い反応を示したのです。このことは一体何を示しているのでしょうか？

詳細は、2023年7月13日付で科学雑誌に掲載されました。

幼児が生の演奏に惹かれる理由

ライブの様子（Image Credit: unsplash )

音楽のライブ演奏に惹かれる大人のように、赤ちゃんも違いがわかるのでしょうか。

そのことを調べるべく、研究者らは生後6カ月から14カ月の乳児120人を対象に、子供向けオペラのライブ演奏と録音を聴かせ分析しました。

このとき録音は、ライブ体験を忠実に再現するよう慎重に設計されました。

調査の結果は驚くべきもので、赤ちゃんの反応は顕著な違いが見られました。

生演奏を視聴した赤ちゃんは12分間の演奏のうち72%の時間において集中が持続しましたが、録音では54%の時間しか集中していませんでした。

さらに生演奏の場合、より長い時間注意を保ち続けました。この結果は多くの疑問を呼び寄せます。

共著者のチレリ氏は、「ライブ体験の何に価値があるのか？生演奏の体験に一人で音楽を聴くことを超えた根本的な何かがなければ、なぜ人々はライブに行くのか？」と述べています。

赤ちゃんは生演奏を鑑賞していると、心拍数が速くなったり遅くなったりするようです。また、周囲の喧騒にもかかわらず、幼児たちは演奏に集中していました。

興味深いことに、幼児たちは音楽に反応しているだけでなく、聴衆の一員であるという感覚をもっているようなのです。

それは赤ちゃんたちが一斉に落ち着いたり、音楽のピッチ変更に一斉に反応して盛り上がるという現象から判明しました。

チレリ氏は、この現象が人間が本能的に生の音楽や経験の共有に魅了される理由を解明する可能性があると考えています。

この現象は、単なる行動の一致というだけではないと考えられます。ここから、経験を共有することで育まれる一体感と仲間意識が生じているかもしれないのです。

幼児期における生の音楽の重要性

赤ちゃん（Image Credit: unsplash )

このことは幼児期の社会的交流の重要性を示しているかもしれません。

経験の共有や聴衆の一員であるという感覚は、幼少期のこのような経験によって育まれているのです。

その中でも音楽は非常に重要な役割を示しているということが、先行研究からも知られています。

幼児は、知っている歌を歌ってくれたり一緒に踊ってくれる人と交流を持つ傾向があるようです。

驚くべきことに、このような音楽に対する感情的反応は、1 歳の誕生日を迎える前から生じているようなのです。

ところで録音ではなく録画の場合、生演奏と比較して違いが生じるのでしょうか？

研究者らは、Zoomを使って幼児に録画を見せたところ、約64%の時間に注意を払っていたことが判明しました。

しかしながら、注意の持続時間は短くより気が散りやすくなったようです。

この調査結果は、快適な家で録画を鑑賞するより、生の演奏を聴いたほうが集中を促すということを示しています。

研究者らは、生演奏に匹敵するオンラインライブの可能性を探っており、生演奏が聴衆に引き起こす記憶と認識の影響について研究していくようです。

これらの発見が、幼児期の音楽鑑賞の効果や、生演奏の価値について再考を促すことは間違いありません。

すべてがオンラインになってしまっても、ライブを求める人々が後を絶ちません。実は、このこと自体が大きな意味があったかもしれないのです。

参考文献

An itsy bitsy audience: Live performance facilitates infants’ attention and heart rate synchronization
https://psyarxiv.com/9s43u/

Babies prefer listening to live music than to a recording of the same performance
https://www.earth.com/news/babies-prefer-listening-to-live-music-than-to-a-recording-of-the-same-performance/