火山活動の可能性がある新たな系外惑星を発見

地球のように火山活動がある系外惑星は存在しているのでしょうか?(*系外惑星とは、太陽系の外にあって太陽以外の恒星を公転する惑星のこと)

近年、観測技術の発展や新たな観測手法の確立によって、太陽系外にある地球型惑星を発見する研究が盛んに行われてきました。これらの研究は、地球外生命体の発見に繋がる可能性がある、極めて重要なものになります。

今回、モントリオール大学とNASAを中心とした研究チームは、火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星「LP 791-18 d 」を発見しました。

LP 791-18 dは、木星の衛星イオのような火山活動があるとされ、大気や水が存在している可能性があります。

LP 791-18 dに火山活動があると推定された理由や、将来的な研究について解説していきます。

詳細は、2023年5月17日に英国科学誌『Nature』に掲載されました。

要点

・約86光年離れた地点に、火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星「LP 791-18 d 」を発見しました。

・LP 791-18 d は、他の衛星の重力相互作用によって潮汐加熱しているかもしれません。

・LP 791-18 d はハビタブルゾーンの内に存在し、大気や水が存在する可能性があります。

系外惑星LP 791-18dは、火山活動が活発かもしれない?

惑星d(LP 791-18b)とその他の惑星の位置関係

重要単語

系外惑星:我々が住む太陽系の外にある惑星。
赤色矮星:恒星の分類の一つ。表面が低温で赤色にみえる。ちなみに、太陽は恒星の分類の一つである主系列星に属している。
ハビタブルゾーン:惑星表面に水が液体として存在することのできる領域を指し、そこでは地球と似た生命が存在できる可能性がある

2019年、NASAの宇宙望遠鏡(Transiting Exoplanet Survey Satellite; TESS)を用いて、地球から約86光年離れた位置にある赤色矮星「LP 791-18」の周りを回る「LP 791-18b」(以下、惑星b)と「LP 791-18c」(以下、惑星c)が発見されました。

惑星bは地球の約1.2倍、惑星cは約 2.5 倍の大きさで、惑星cの質量は地球の7倍以上もあります。赤色矮星「LP 791-18」の周りを地球に似た惑星bが回り、外側に地球よりも大きな惑星cが公転していたのです。

しかし、当時の研究では、この二つの惑星しか発見されていませんでした。

今回、モントリオール大学とNASAを中心とした研究チームは、TESSとスピッツァー宇宙望遠鏡(Spitzer Space Telescope; SST)を用いて、新たな惑星「LP 791-18d」(以下、惑星d)を発見しました。

惑星dは、惑星bと惑星cの間に位置しており、地球よりわずかに大きくて重いと推定されています。また、赤色矮星「LP 791-18」は太陽よりも小さくて暗いため、惑星dは恒星に非常に近いにも関わらず、地球よりわずかに暖かいだけと考えられています。

この惑星dの発見は、どこが革新的なのでしょうか?

研究チームは、宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による観測のデータから、惑星cと惑星dが公転している間に150万kmにまで接近することがわかりました。地球と火星の最接近時の距離が7,528万kmなので、150万kmという距離が如何に近いかがわかります。

この接近によって、惑星dは惑星cからの強い引力を受けると考えられます。それにより惑星dの公転は楕円軌道を描き、潮力によって火山活動が発生している可能性があるのです。

事実、木星の衛星でガリレオ衛星の一つであるイオは、同じくガリレオ衛星であるエウロパとガニメデの重力相互作用による潮汐加熱によって、活発な火山活動を発生させています。

そして、イオと同じような現象が、惑星dでも起きている可能性があるのです。もしこの仮説が当たっていれば、地球と同じサイズで火山活動が活発な、極めて珍しい系外惑星が発見されたことになります。

では、この発見はどのような研究に繋がっていくのでしょうか?

水や大気が存在する可能性もある!?

LP 791-18 d のイメージ図 ; Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith (KRBwyle)

前述のように惑星dは、岩石惑星で地球と同じくらいの大きさであり、加えて活発な火山活動の可能性があります。

さらに重要なことは、惑星dが「ハビタブルゾーン」の内側に存在していることです。ハビタブルゾーンとは、惑星表面に水が液体として存在することのできる領域を指し、そこでは地球と似た生命が存在できる可能性があることを意味します。

惑星dで発生する活発な火山活動は、大量の気体を惑星表層に噴出させているかもしれません。つまり、惑星dには大気と水があるかもしれないのです。

地球とここまで環境が似ていたとしたら、地球外生命が存在する可能性があります。

また、惑星dは潮汐力が原因で、恒星に一面だけを見せていることが指摘されています。大気の存在の有無にもよりますが、ある条件が整えば、夜側に水か氷が存在している可能性が高まります。また、氷が存在していたとすると、昼側と夜側の境界で、水が発生ていることも考えられます。

いずれにせよ、火山活動の可能性を見つけた今回の発見は、地殻活動の惑星大気への影響や、生命誕生の起源を探るうえで、重要な役割を果たしそうです。

今後、惑星dの火山活動の直接的な証拠、大気の有無と組成などの研究が期待されます。

参考文献

A temperate Earth-sized planet with tidal heating transiting an M6 star
https://www.nature.com/articles/s41586-023-05934-8

A likely volcano-covered terrestrial world outside the Solar System
https://exoplanetes.umontreal.ca/en/a-likely-volcano-covered-terrestrial-world-outside-the-solar-system/

Earth-sized alien planet LP 791-18 d believed to be gripped by widespread volcanism
https://www.abc.net.au/news/2023-05-18/earth-sized-alien-planet-gripped-by-widespread-volcanism/102363660