陰謀論者を説得するために有効な方法を確立!?
アメリカで大きな社会問題となっている陰謀論。
2011年には、トランプ元大統領の支持者で陰謀論を唱える「Qアノン」の信奉者が、米連邦議会の議事堂を襲撃するなど大きな事件にも発展しました。
近年、コロナ禍を経た日本でも陰謀論が一般に広がりつつあり、早急な対策が求められています。
今回、アイルランドにあるユニバーシティ・カレッジ・コークのシアン・オマホニー氏は、陰謀論者を説得するのに有効な幾つかの方法を実証的に発見しました。
その方法とは、一体どのようなものなのでしょうか?
詳細は、2023年4月6日に学術誌『PLOS ONE』に掲載されました。
要点
・説得や科学的根拠の提示では、陰謀論者の信仰を変更させるのは極めて難しいことが判明。
・科学と疑似科学を区別するために情報を批判的に分析する方法を訓練することが有効。
・あらかじめ程度の低い陰謀論とその反論を教えておく方法も有効。
疑似科学を区別する方法の訓練が有効
地球は平面であるというプラカードを掲げた人々のデモ。代表的な陰謀論の一つ。(Image Credit: unsplash)
用語
陰謀論者:ある出来事や状況に対し、根拠の有無にかかわらず、裏の組織が関与していると信じ込む人々。
Qアノン:アメリカの政治的な陰謀論およびそれに基づく政治運動。2017年にネットを中心に発生した。
2021年、ネット上の陰謀論「Qアノン」を妄信する人々によって引き起こされたアメリカ連邦議会襲撃事件は、世界を震撼させました。ネット空間にあるだけと思われていた陰謀論によって、実際に暴動事件が起きてしまったのです。
陰謀論は決してアメリカに固有の問題というわけではありません。日本でもQアノンから派生した組織が作られたり、ネット上で陰謀論を拡散したりと、着実に人々に浸透していきていると考えられています。
アメリカ連邦議会襲撃事件以降、陰謀論の研究は盛んに行われてきました。どのような人々が陰謀論に騙されやすいのか、どのような心理の元で行動にまで移されるのか、といった基礎的なデータが集められてきたのです。
しかしながら、陰謀論者の思い込みに対処するための有効な手段は、これまでほとんど研究されてきませんでした。
今回、オマホニー氏の研究チームは、陰謀論者の信仰を変えることのできる有効な手段を幾つか発見しました。
その方法とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
まず、君の信じている陰謀論は間違っているといった単純な説得や、科学的根拠の提示する手法は、殆ど役に立たないことが示唆されました。一度でも陰謀論が確立してしまうと、それを変更させるのは極めて難しいのです。
殆どの手段が無意味であることが示唆されたなかで、有効な方法が二つ示されました。
最も有望であったのは、科学と疑似科学を区別するために情報を批判的に分析する方法を訓練することでした。そのような教育を3ヶ月間受けると、陰謀論を信じる割合は著しく低下したようです。
また、読みにくいフォントでテキストを与えると、陰謀論に陥る可能性が低下することも判明しました。これらのことから、陰謀論に警戒する心構えが重要であることが分かります。
もう一つ有望だったのは、予防接種のように、あらかじめ程度の低い陰謀論とその反論を教えておく方法です。この場合、陰謀論に耐性を持つことができるので、新たな陰謀論に批判的に対処できるようです。
逆に、陰謀論者だとのレッテルを貼る行為は、効果がないか、もしくは陰謀論の信仰を増大させる可能性があることが示されました。論破やレッテル貼りが効果を示さないどころか、逆効果になることもあるかもしれません。
説得が効果を示さない以上、結局は、陰謀論を信じる前の教育が重要だということになりそうです。とはいえ、この分野の研究はまだ少ないようなので、これからの研究が待たれます。
オマホニー氏たちは、批判的思考スキルを磨くことを目的としたゲームを開発しているようです。楽しみながら批判的思考も身に付く。完成したらやってみたいものです。
参考文献
The efficacy of interventions in reducing belief in conspiracy theories: A systematic review
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0280902
Most methods for squashing conspiracy theories don't work, study finds. Here's what does.
https://www.livescience.com/most-methods-for-squashing-conspiracy-theories-dont-work-study-finds-heres-what-does