イーロン・マスク氏の会社ニューラリンクが脳インプラントの臨床試験の許可を取得！

2023年6月3日 2023年6月17日

木村典人

脳にインプラントを埋め込んで体を動かす、そんな未来が現実になるかもしれません。

脊髄などの神経系を損傷した場合、脳から発せられた命令が身体まで届かず、身体の一部が麻痺してしまうことがあります。

現在、そのような場合でも自由に身体が使えるようになるために、脳にインプラントを埋め込み電気信号を解析する技術が研究されています。

今回、イーロン・マスク氏の会社ニューラリンクは、臨床試験を実施する許可を米国食品医薬品局（FDA）から与えられました。

臨床試験が始まることで、この技術が一般に普及するのも間近に迫っているかもしれません。

・イーロン・マスク氏の会社ニューラリンクは、臨床試験を実施する許可を米国食品医薬品局（FDA）から与えられた。

・ニューラリンクは以前に動物愛護団体から告訴状を受けている。

安全性が認められ臨床実験がついに始まる！？

脳の模型 (Image Credit: unsplash）

ブレイン・コンピューター・インターフェース：Brain-computer interface（BCI）。脳とコンピューターを繋げる技術。
ニューラリンク：マスク氏が共同設立した会社。BCIの開発をしている。

「ブレイン・コンピューター・インターフェース」（BCI）とは、人間の脳と外部機器を繋げる技術で、近年目覚ましい発達を遂げています。

BCIは、脳から発せられた電気信号を解析し、読み取った内容を再び信号に変えて送信することで、コンピューターやロボットを操作できる技術です。BCIを応用すれば、思考するだけで遠方にある機械や麻痺した身体を動かすことができるのです。

近年では、人工知能（AI）の発展に伴い電気信号の解析能力が飛躍的に上昇したため、高い精度で思考を読み取れるようになってきています。

そのため、多くの研究者や企業がこの分野に参入しており、一部ではすでに実用化も始まっています。

例えば、2022年にSynchronが開発したシステムを人間の患者に初めて移植しました。この装置を用いれば、身体に麻痺のある人が思考だけで支援する機械を動かすことができるようになります。

そのような状況の中、イーロン・マスク氏が共同設立した会社ニューラリンクは、BCIを用いた臨床試験を実施する許可を、米国食品医薬品局（FDA）から与えられました。

ニューラリンクによれば、脳インプラントは開けられた頭蓋骨の小さな穴に挿入され、取り付けられた電極は脳の外側にある皮質にわずか数ミリメートルだけ埋め込まれます。手術時間は30分と短く、全身麻酔も必要ないそうです。

ただし、これまでにニューラリンクが問題を起こしてきたことも知っておく必要があります。

ニューラリンクはこれまで、脳インプラントを施す実験を動物に対して行ってきました。しかし、動物実験が急かされて行われいること、動物に対して不必要な苦痛が与えられ死に繋がっているという社員の告発を、ロイター通信が報じたのです。

2022年2月には、動物愛護団体である「責任ある医療のための医師委員会(PCRM)」が、ニューラリンクの猿に対する実験で、未承認の接着剤が脳に漏れ出し猿を死亡させたという告訴状を提出しました。

また、2018年には、羊、豚、猿など推定1,500頭の動物を死亡させたと、ロイター通信が報じています。

米国食品医薬品局（FDA）からの承認を得ようとしたのは今回が初めてではなく、2022年にも申請をしていましたが、安全性の観点から拒否されていました。

とはいえ、イーロン氏はこの技術に自信を見せており、将来的には自分の脳にも埋め込むつもりだと主張しています。

今回、米国食品医薬品局（FDA）から承認を得たことで、本格的に臨床実験が始まると予想されます。臨床試験の応募はまだ始まっていないようですが、近い将来この最新技術が一般に利用できるようになるかもしれません。

AIと機械と人類によるより良い社会に向けて、技術の発展はさらに加速していくことでしょう。

Elon Musk claims Neuralink is about ‘six months’ away from first human trial
https://www.theverge.com/2022/11/30/23487307/neuralink-elon-musk-show-and-tell-2022