サンゴ礁に生息する微生物の驚くべき多様性を発見

微生物の世界には、まだ分かっていないことが沢山ありません。

その一つが微生物の多様性です。細菌の種類の数は大雑把に推定されていますが、未だ発見されていない生物圏が存在している可能性もあるのです。

今回、太平洋のサンゴ礁に関する史上最大規模の調査の結果、サンゴ礁だけで約300万種類の細菌が生息している可能性が報告されました

この結果は、地球上に存在する微生物の種類の推定値とほぼ同じ数であり、これまでの推定が過小評価であることを示唆しています。

詳細は、2023年6月1日に科学雑誌『Nature Comunications』に掲載されました。

要点

・研究チームは、約5,000 個のサンプルから微生物の遺伝子配列を解析し、約54万にもなるDNA配列を発見

・今回発見された太平洋のサンゴ礁に生息する細菌は、地球上に生息する細菌の20%を占めている

・地球上の全ての細菌の種類のこれまでの推定は、実際よりも過小に評価している可能性がある

・生物の多様性はサンゴに対して、保険のような役割を果たしている可能性がある

サンゴ礁に生息する細菌は想像よりも大量にいた!?

サンゴ (Image Credit: unsplash

用語

サンゴ礁:熱帯や亜熱帯の綺麗な浅い海に形成される。サンゴや有孔虫などの石灰質の遺骸から成る。

2016から2018年の2年間、海洋科学探査船「タラ号」は太平洋のサンゴ礁を大規模に調査してきました。

タラ号の航海距離は10万kmにも及び、249ヶ所から水、エアロゾル、サンゴ、魚、プランクトンのサンプルを58,000個収集しました。

その中でも、サンゴ礁は99ヶ所から採取しており、水、サンゴ、魚の5,392個のサンプルを収集しました。

それではこの中に、細菌はどれくらいの種類が存在していたのでしょうか?

細菌は形や構造では区別がつきにくいですが、遺伝子配列を解析することで分類することができます。

今回、パリのソルボンヌ大学のガランド氏の研究チームは、約5,000 個のサンプルから微生物の遺伝子配列を解析し、約54万にもなるDNA配列を発見しました。

この54万という数字は、多いのでしょうか?それとも少ないのでしょうか?

これまでの研究では、インド洋のサンゴ礁には約44,000種類の細菌が存在していると推定されてきました。つまり、今回発見された最近の種類は、これまでの推定値と比べて約10倍も多いのです。

現在、地球上に生息する全ての細菌の種類は272万~544万と推定されているので、今回発見された太平洋のサンゴ礁に生息する細菌だけで、全体の20%を占めていることがわかります。

さらに研究チームは、得られた数値から世界のサンゴ礁に生息する細菌の種類が280万に及ぶと推定しました。この値は、地球上の全ての細菌の種類とほぼ同じ値であり、これまでの推定が実際よりも過小に評価している可能性があります

細菌の多様性の意外な役割とは

それでは細菌の多様性は、サンゴにどのような効果を与えるのでしょうか?

他の研究では、細菌がサンゴに必要なアミノ酸やビタミンを獲得する手助けをしていることを報告しています。細菌はサンゴにとって必要不可欠な存在なのです。

しかしながら、環境の変動などによって、細菌が死滅してしまうことがあります。気候変動による水温上昇などが典型的ですが、このとき細菌の多様性が非常に有効に働くかもしれません。

つまり、一部の細菌が死滅しても、高温に強い細菌が生き残りサンゴに栄養を補給するのです。生物の多様性はサンゴに対して、保険のような役割を果たしているかもしれないのです。

生物の多様性は、想像以上に幅広いのかもしれない。今回の研究は、その可能性をはっきりと示してくれました。これからの研究でも、意外な場所から広大な生物圏が発見されるかもしれません。

参考文献

Diversity of the Pacific Ocean coral reef microbiome
https://www.nature.com/articles/s41467-023-38500-x

Epic voyage finds astonishing microbial diversity among coral reefs
https://www.nature.com/articles/d41586-023-01807-2

Coral reefs host millions of bacteria, revealing Earth’s hidden biodiversity
https://www.sciencenews.org/article/coral-reef-bacteria-microbe-biodiversity

Ecology of Endozoicomonadaceae in three coral genera across the Pacific Ocean
https://www.nature.com/articles/s41467-023-38502-9