地球の水はどこからきたのか?小惑星探査機はやぶさの新たな研究

2010年に地球に帰還した日本の小惑星探査機はやぶさが、イトカワに辿り着いたのは2005年のこと。

そのときサンプリングした試料から、新たな研究成果が発表されました。

今回、アリゾナ大学月惑星研究所の研究者らは、発見された小さな塩の粒子から、太陽系に液体の水がこれまで考えられてきたよりも良い一般的に存在している可能性を示しました

この結果は、太陽系を高速で回っている小惑星が推定されていたほど乾燥していない可能性を示しています

生命の誕生にとって最も重要な物質である水。この不思議な液体の起源に迫ります。

詳細は、2023年6月12日に科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載されました。

要点

・発見された塩の結晶が小惑星イトカワに由来することを世界で初めて証明

・乾燥していて水の起源として考えられてこなかった普通コンドライトが、地球の水の起源に大きな役割を果たしていた可能性を示唆

水の存在を示唆するイトカワ由来の塩の結晶を発見

イトカワ (Image Credit: JAXA

用語

イトカワ:日本の探査機はやぶさが調査対象とした小惑星。
地球近傍小惑星:地球に近接する軌道を持つ天体。
S型小惑星:ケイ酸鉄やケイ酸マグネシウムを主とする小惑星。既知の小惑星の約17%を占める。

地球にある水は一体どこから来たのでしょうか。この問題は地球科学の最大の謎であるとともに、生命誕生の起源に迫るうえで大変重要であることが知られています

日本のはやぶさミッションは、2005年に小惑星イトカワに到着しサンプリングをしたのち、2010年にさまざまな困難を乗り越えて地球に帰還しました。

探査機はやぶさがターゲットにした小惑星イトカワは、地球近傍小惑星のうちの一つでS型小惑星に分類されます。

地球で発見される隕石のほとんどがこのような惑星に由来しており、隕石からは水を含む鉱物はほとんど知られていませんでした。つまり、液体の水などほとんど存在しない極めて乾燥した惑星だと考えられていたのです

アリゾナ大学月惑星研究所のトム・ゼガ氏とシャオファン・チェ氏は、イトカワで収集されたサンプルを徹底的に分析することで、発見された塩の結晶が小惑星イトカワに由来することを初めて証明しました。

この結果は、イトカワやそれに似た惑星に液体の水が普遍的に存在している可能性を示唆しています

この研究の最大の難所は、如何にして地球からの汚染の可能性を排除し、塩の結晶が母体由来であるかを示すところにあります。

はやぶさが着陸した際に、サンプルに地球由来の物質によって汚染された可能性もありますし、人間の汗が混ざってしまったことも考えられます。

汚染の可能性を取り除くのは大変難しいため、これまでの研究ではイトカワ由来であることを示すのができていませんでした。

研究者らは様々な技術を駆使し、塩の結晶がイトカワ由来であることを示しました。塩化ナトリウム粒子の分布が5年間にわたって変化していないことや、地球上の岩石サンプルとの比較などから確証を深めていったのです。

地球の水の起源は普通コンドライトだった!?

隕石 (Image Credit: unsplash

研究チームは、塩化ナトリウムに加えてケイ酸塩鉱物である斜長石の鉱脈を発見しました。この鉱物が地球上の岩石で発見された場合、水の変質によって形成されたと考えられています。

イトカワのサンプルでは、塩化ナトリウムの結晶に関連して斜長石の鉱脈が見られるということは、水の存在を強く示唆しています。

さて、これまでの研究では、地球の水の起源はどこから来ていたと考えられていたのでしょうか?

それにはいくつかの有力な仮説があります。

一つ目は、氷と岩石の塊である彗星からの供給です。地球の形成初期の段階では、彗星や小惑星が頻繁に衝突した「後期重爆撃」と呼ばれる時期があったと考えられていて、この時に水が供給されたと考えられています。

もう一つは、炭素質コンドライトと呼ばれる隕石からの供給です。この隕石はイトカワと異なり水を含むことで知られており、そのため地球の水の起源として考えれてきました。

しかし彗星の水は、同位体組成が地球の水と一致しないことから、供給源としては不適当な可能性があります。

今回の研究結果は、これまで考えられてきた炭素質コンドライトだけでなく、乾燥していて水の起源として考えられてこなかった普通コンドライトが、地球の水の起源に大きな役割を果たしていた可能性を示唆しています。

未だに分かっていない地球の水の起源。今回の研究が水の起源として普通コンドライトの可能性を示したことで、太陽系形成初期の地球形成過程についても大きな手がかりを与えてくれるようです。

地球の水の起源は、水を多く含んだ炭素質コンドライトなのか、それとも一見すると乾いたように見える普通コンドライトなのか。地球科学における最大級の問題が解決される日は近いのかもしれません。

参考文献

Hydrothermal fluid activity on asteroid Itokawa
https://www.nature.com/articles/s41550-023-02012-x

How did Earth get its water? New clues discovered in an asteroid sample
https://www.earth.com/news/how-did-earth-get-its-water-new-clues-discovered-in-an-asteroid-sample/