過去の地球は1日が19時間だった!?生命進化が遅れた原因かも

地球は46億年の歴史の中で様々な変動を被ってきましたが、変化が比較的穏やかになる奇妙な期間がありました。

18億年前から8億年前のその期間を、研究者たちは「退屈な10億年(Boring Billion)」と呼びます。その間は、地殻変動が活発でなく生命進化があまり進まなかったことが知られています。

今回、中国科学院大学の研究者らは、退屈な10億年の間は地球が19時間で自転していた可能性があることを示しました

この安定した状態は幾つかの対立する力の絶妙なバランスで成り立っていて、生命進化を遅らせた可能性があります

詳細は、2023年6月12日に科学雑誌『Nature Geoscience』に掲載されました。

要点

・20億年前から10億年前の間に、地球の日の長さが19時間で横ばいになっていたと推定された

・この期間に生じた安定期間が原因で生命進化が遅れていた可能性がある

退屈な10億年という奇妙な期間はなぜ生じたのか?

月。(Image Credit: unsplash)

用語

大酸化イベント:Great Oxidation Eventのこと。GOEと略される。大気の酸素濃度が上昇したイベント。23億年前に発生した
退屈な10億年:Boring Billion のこと。地殻変動が活発でなく生命進化があまり起こらなかった10億年間のこと。18億年前から8億年前を指す。

地球が形成されてから約46億年経ちますが、その間には地球規模の様々な変化がありました。

特に有名なのが、約23億年前に発生した大酸化イベント(GOE:Great Oxidation Event)や、約6億年前に発生した全球凍結イベント(スノーボールアース現象)です。

ところが、地球は常に大規模な変動に見舞われていたわけではありません。

18億年前から8億年前の10億年間は、地殻変動が活発でなく生命進化があまり進まなかったことが知られており、その期間は「退屈な10億年」と呼ばれています

この退屈な退屈な10億年は変動が少ないことは知られていましたが、その原因については未だにはっきりとはしていませんでした。

地球に大きな影響を及ぼす要因として月の重力があります。月は形成された当初から徐々に地球から遠ざかっており、海で発生する潮や自転周期に影響を与えてきました。昔は月は地球に近くにあったので、地球から見た月は今よりも大きく見えたのです。

先行研究では、月が地球から遠ざかるにつれ地球から回転エネルギーを奪うため、地球の自転はゆっくりになることが示されています。つまり、日が経つにつれて徐々に一日が長くなっているのです

その影響で今でも1年に0.000015 秒ほど一日が長くなっていると推定されています。

しかし自転の速度が遅くなるという変化は、一定の速度で起こっていることなのでしょうか?

2018年の研究では、40億年にわたって1日の長さが着実に伸びていると予測しており、14億年前で地球の1日の長さが18時間であったと推定しています。

また、1日の長さは長期間変化がなく、その後になって増加したという説を主張している研究者もいます。

過去の地球の1日の長さに対しては様々な説が存在していますが、化石や岩石がほとんど残されていないため地質学的証拠から証明することは非常に難しいとされています

1日の長さは19時間で10億年間も安定していた

地球の日の長さが増加し、その後横ばいになり、その後再び増加することを示すグラフ。

地球の日の長さの経年変化。20億年前から10億年前にかけて停滞していると推定された。(Image Credit: Mitchell & Kirscher, Nature Geoscience)

今回、ミッチェル氏とキルシャー氏は、これまでに蓄積されてきた地質データを利用して、自転周期の変化のシミュレーションを行いました。

その分析の結果、スノーボールアースやカンブリア大爆発と呼ばれる生命進化が拡大した時期の前にあたる20億年前から10億年前の間に、地球の日の長さが19時間で横ばいになっていたことが推定されました。

さらに言えば、この期間は大気の酸素濃度が上昇しオゾンを形成したとされる大酸化イベントの後に続いたということになります。

形成されたオゾンは太陽光を吸収し日中の大気の温度を上昇させ、月の潮汐より弱い太陽潮汐を活発にした可能性があるそうです。

そして太陽光とオゾンによって大気の潮汐が強まったために、相反する力がバランスして、1日19時間という状態が10億年もの間安定したのかもしれません

ミッチェル氏とキルシャー氏は、「共鳴点では、海洋と大気の潮汐力が釣り合い、地球の自転速度を一定の状態で安定になる」と説明しています。

酸素濃度が上昇したにもかかわらず生命進化が遅れたのは、この安定した状態が崩れるまで待たなければならなかったからかもしれません。

1日が長くなれば光合成細菌に十分な太陽光が供給され、大気の酸素濃度はさらに上昇させたと考えられます。

生命進化は退屈な10億年の後に再び加速します。生命進化と1日の長さの意外な関係。将来の研究で、この関係についてより多角的に検証されることが期待されます。

参考文献

Mid-Proterozoic day length stalled by tidal resonance
https://www.nature.com/articles/s41561-023-01202-6

A Day on Earth Used to Last Only 19 Hours. Now We Know Why.
https://www.sciencealert.com/a-day-on-earth-used-to-last-only-19-hours-now-we-know-why