古代植物の3次元復元から進化の意外な展開が発覚
0、1、1、2、3、5、8、13、21、34……。さてこの数字の並びは何と呼ばれるでしょうか?
答えはフィボナッチ数列。前の2つの数字を足したものが次の数字になる数列で、最初は0と1から始まります。
実は、フィボナッチ数列地球で最初の陸上植物がフィボナッチ螺旋を持っていたことに由来すると考えられてきました。
今回、エディンバラ大学を中心とする研究チームは、約4億700万年前に生息していた植物の化石が非フィボナッチ螺旋を有していた証拠を発見しました。
陸上植物は進化の過程でフィボナッチ螺旋を獲得したのかもしれません。
詳細は、2023年6月15日に科学雑誌『Science』に掲載されました。
要点
・約4億700万年前に生息していた植物の化石が非フィボナッチ螺旋を有していたことが発覚した
・古代の植物は非フィボナッチ螺旋が一般的であった可能性がある
古代植物ではフィボナッチ螺旋が一般的でなかった!?
ヒマワリの種。フィボナッチ螺旋構造を持っている(Image Credit: unsplash)
自然界にはフィボナッチ数列が至るところに存在しています。
直感的には、0、1、1、2、3……という数字の並びは自然界にあるはずがないと思うかもしれませんが、フィボナッチ螺旋という形になって見える形で存在しています。
フィボナッチ螺旋とは、フィボナッチ数列を一辺に持つ正方形を隣接して並べたもので、人間が美しいと感じる形だと言われます。これは黄金比と関係していて、連続するフィボナッチ数の比は黄金比に収束することが知られています。
このフィボナッチ螺旋は人間が作りだしたものではなく、普段は気付きにくいのですが自然界に広くみられる構造です。
植物では葉、種子、花びらなどの配置がフィボナッチ螺旋を描いていますし、貝殻や台風、松ぼっくりやパイナップルなどもフィボナッチ螺旋を描いています。
もっと有名なのがヒマワリの種で、時計回りと反時計回りの 2 組の螺旋状に配置されています。植物界でフィボナッチ螺旋がよくみられるのは、太陽光などを効率的に浴びることができるからだと考えられています。
したがってこれまでの研究では、フィボナッチ螺旋は古代から陸上植物が有していて、進化の過程で保存されてきたと考えられてきました。
今回、エディンバラ大学を中心とする研究チームは、約4億700万年前に生息していた植物であるクラブモスの化石を解析し、最新技術を用いて3次元構造を復元しました。
その結果、約4億700万年前に生息していた植物の化石が非フィボナッチ螺旋を有していたことが発覚したのです。
現在の植物では、このようなフィボナッチ数列ではない螺旋構造を持つことは大変珍しいです。
この化石は、スコットランドのアバディーンシャーの堆積物に保存されている有名なもので、陸上植物の最初期の生態系が保存されていると考えられています。
つまり、最初期の陸上植物がフィボナッチ螺旋を持っていたという従来の説は誤りの可能性があり、非フィボナッチ螺旋が一般的であったことを示唆しています。
そしてこの研究は、螺旋構造の進化がフィボナッチ螺旋と非フィボナッチ螺旋を持つ2つの経路を辿ったことを示唆しています。
古代の植物の化石の3次元構造を復元することで発見された意外な可能性。陸上植物の葉っぱの構造の進化過程は、従来考えられてきたよりも複雑なのかもしれません。
参考文献
Leaves and sporangia developed in rare non-Fibonacci spirals in early leafy plants
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adg4014
Fibonacci spirals: An unexpected twist in plant evolution
https://www.earth.com/news/fibonacci-spirals-an-unexpected-twist-in-plant-evolution/